記録と伝承
カイジネルの屈辱
天界の最高神アリエルの決断により、大パンデモニウムとの戦争が宣言された直後の出来事であった。
当時、カイジネルの勅令を受けて、幻想のレギオンはわずか21日でアビス関門に要塞を築くという快挙を成し遂げた。
アビスの不安定性を考慮すれば、魔族が決して真似できない速度だった。魔族陣営も追随して要塞を築いたが、寄せ集めのような軍団の姿に嘲笑を漏らした。
アビスでは、ほぼ毎日戦闘が続き、敵味方を問わず遺体が山のように積み重なっていた。オードの影響がほとんど及ばない危険地帯では、ディーヴァでさえも死の運命を変えることができなかったためである。
魔族だけでなく、アビスのどこかに突然姿を現すかもしれない龍族の危険も潜んでいた。
刃の上を歩くような緊張感の中、カイジネルは幻想のレギオンの中から、オード魔法を操る精鋭のガーディアンを召集した。
アビスには、オードが安定して流れる地域が少なく、その地域を先に占領することが勝敗を左右する重要な要因となった。
カイジネルは、金属性を帯びた重い岩石で構成された浮島地形に注目し、浮島周辺のオードの質量を変更することで、魔族の最前線を崩壊させる戦術を立案した。
時間の流れすら分からないアビスから、敵の部隊の駐屯地へ忍び込んだ兵士たちは、用意していた魔法を使用した。
そして、魔法を唱える瞬間、ルミエル神の印が刻まれた魔力の球体が現れた。
まるでカイジネルの計画を先読みしたかのように一斉に現れた球体は、カイジネルの魔法を引き寄せ始めた。互いに引き合う強力な磁性物質のように、瞬く間に密集したオードの周囲に曲がりくねった時空の線が現れ、その衝撃で浮島が次々と落下し始めた。
カイジネルが夢見た完全勝利の光景と全く同じように、彼のレギオンは全滅してしまった。
相手の術者の力が強力であればあるほど、より大きな威力を発揮する単純な罠魔法であることが明らかになり、目の前で愛しいレギオンを失ったカイジネルは激しく怒りを露わにした。
彼は勝敗が決する前に、彼らから名誉を奪ったルミエルを呪った。
カイジネルは、この日の敗北に自身の名前を付け、自ら「カイジネルの屈辱」と記録するよう命じた。
ルミエルの敗北後、カイジネルは誰にも知らせずにベルテロンに移り、エルデス神殿を建設した。
カイジネルの著作に残された様々な魔法の中でも、特に性質が暗い精霊魔法は、この時期を境に著しく増加したと知られている。