記録と伝承
クロリスの日記帳
[X月X日]
またしても撤退だ。
昼は息を殺して逃げ、夜は奴らの隙を突いて奇襲する、終わりなき悪循環。足の裏の硬くなった皮が裂け、血がにじみ出ても止まることはできない。
この終わりの見えない消耗戦の果てに何が残るのか、今は想像すらつかない。
[X月X日]
今日もまた一人、冷たい土に埋めた。
碑石どころか、ひと握りの土すらまともにかけてやれないまま、背を向けなければならなかった。
弔いは贅沢だ。
私の涙一滴で、残された者たちの命が揺らぐ。
膝をつく権利など、私にはない。
[X月X日]
アテロン。
奴の眼差しが脳裏に焼きついて離れない。
何の感情も感じられない、空っぽの目。
四方が血に染まるあの地獄の中で、私は冷たくなっていく仲間たちの亡骸の後ろに隠れ、息を殺していた。
そして不幸にも、私は生き残った。
生き残った惨めさが、怒りへと変わっていく。
指一本動かせなかった自分の卑怯さに虫唾が走り、吐き気がする。
アテロン、お前が私を生かしておいたことは、最も致命的な過ちとなるだろう。
必ず後悔させてやる。
必ず。
(日記はここで終わっている)